レンズと水滴

 とある映画の、二人の男女が海で水をかけあって戯れるシーンで、水が一滴、二滴、カメラについて画面がぼやけた。

 ありふれた映画の、ありふれたシーン。カメラに水滴がつくことも含めて、ありふれている。けれども、僕は怖くなってしまった。

 広い浜辺に、男女が二人っきりというシーンなのかと思いきや、カメラが確かにそこにあるという現実を、思い知らされたからだ。

 カメラなしに映画は存在しえないという現実を思い知ったからだ。

 なぜ、水滴がついたショットを、そのまま映画本編に使ったんだろうと、撮影者の無頓着さをなじりたくなる。

 映画における「カメラの存在」っていうのはけっこう深刻な問題だと思うが、どうなんだろうか?